「ChatGPTに調べ物をさせたら、存在しない法律を教えられた」 「紹介されたURLをクリックしたら、リンク切れだった」
AIを活用し始めた企業様から、 このようなトラブル報告をよく耳にします。
AIは非常に優秀ですが、 「息をするように、もっともらしい嘘をつく」 という困った性質を持っています。
これを専門用語で「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。
この性質を知らずにビジネスで利用すると、 誤った情報を顧客に伝えてしまい、 信用問題に発展するリスクがあります。
この記事では、AIコンサルタントの視点から、 なぜAIは嘘をつくのか?そして、そのリスクを回避するための「ダブルチェック体制」について解説します。
そもそも、なぜAIは嘘をつくのか?
「AI=正確なコンピュータ」と思っていると、 ハルシネーションの正体は見えてきません。
現在の生成AI(LLM)は、 辞書やデータベースではなく、 「言葉の確率パズルを解くマシン」だからです。
AIは、事実かどうかに関係なく、 「文脈的に、次に来る確率が高い言葉」を繋げているだけです。
わかりやすい例え話
AIは、「知ったかぶりの即興詩人」のようなものです。 彼らは「わかりません」と黙るよりも、 「それっぽい言葉」を並べて、会話を成立させることを優先します。
その結果、 架空の判例、架空の人物の経歴、架空の数値を、 あたかも真実であるかのように自信満々に出力してしまうのです。
よくある「AIの嘘」パターン
ビジネス現場で特に注意すべきハルシネーションには、 いくつかのパターンがあります。
1. 架空のソース(情報源)の提示
「参照元のURLを教えて」と頼むと、 AIは https://www.example.com/report2024 のような 「ありそうなURL」を勝手に生成(捏造)することがよくあります。 クリックしてもページは存在しません。
2. 数値や計算の誤り
文章作成は得意ですが、実は「計算」は苦手です。 特に桁数が多い計算や、複雑な論理パズルでは、 平気で間違った答えを出すことがあります。
3. 最新情報の欠如
多くのAIは、学習した期間までの知識しか持っていません。 昨日起きたニュースや、最新の法改正については、 古い情報のまま答えるか、適当に創作して答える可能性があります。
リスクをゼロにする「ダブルチェック体制」の作り方
ハルシネーションは、技術が進化しても完全になくなることはありません。 したがって、「AIは嘘をつくものだ」という前提で運用ルールを作ることが不可欠です。
以下の3つの防御壁(ダブルチェック)を構築してください。
対策1: 「ファクトチェック」を業務フローに組み込む
AIが出した回答を、そのままコピペして使うのは厳禁です。 必ず「裏取り(Fact Check)」を行う工程を設けます。
- Google検索で確認する。
- 一次情報(官公庁のサイトや原文)に当たる。
「AIで9割作り、最後の1割(事実確認)を人間がやる」 この役割分担こそが、最強のリスク管理です。
対策2: 「RAG(ラグ)」を活用する
これはシステム的な対策です。 AIに自由作文させるのではなく、 「社内マニュアルや信頼できる資料」を読み込ませ、そこに基づいて回答させる技術(RAG)を使います。
「添付した資料のP.5に基づいて答えて」 と指示を限定することで、嘘をつく確率を劇的に下げることができます。
対策3: AIの苦手分野を使わせない
そもそもハルシネーションが起きやすい業務には、AIを使わないという判断も重要です。
- 向いている業務: アイデア出し、文章の要約、翻訳、メール下書き。
- 不向きな業務: 正確性が求められるリサーチ、複雑な計算、医療・法律の最終判断。
AIコンサルタントが必要な理由
「現場の社員に『嘘に気をつけろ』と言っても、判断がつかない」 というご相談をよくいただきます。
ハルシネーションを見抜くには、ある程度のコツ(リテラシー)が必要です。
AIコンサルタントは、以下のような支援を行います。
- 「RAG」環境の構築: 社内データのみを参照する、嘘をつきにくいAIシステムの導入。
- ガイドライン策定: 「この業務はAI禁止」「ここはダブルチェック必須」という明確な線引き。
- プロンプト研修: 「もし知らなければ『知らない』と答えて」という指示をAIに与え、ハルシネーションを抑制するテクニックの伝授。
まとめ
AIのハルシネーション対策の要点は以下の通りです。
- AIは事実を知っているわけではなく、「それっぽい言葉」を繋げているだけ。
- URLや数値の捏造は頻繁に起きる。
- 「人間による最終確認」を業務フローから外してはいけない。
「AIは嘘をつくから使えない」のではなく、 「嘘をつく前提で、どう使いこなすか」が、 AI時代のビジネスリテラシーです。
まずは、社内で 「AI生成物は必ずGoogle検索で裏取りをする」 というシンプルなルールを徹底することから始めてみませんか。